コラムcolumn
企業型確定拠出年金の全体像と税制優遇のポイント
前回のコラムでは、企業型確定拠出年金(企業型DC)を導入することで、節税と資産形成の両立が可能になるという点をご紹介しました。
今回は、その制度の全体像と、具体的にどのような税制優遇が受けられるのかを解説いたします。
■ 確定拠出年金の3ステージ:<拠出> <運用> <給付>
企業型DCは、「拠出(積立)」「運用」「給付(受取り)」に加えて、「持ち運び(ポータビリティ)」の4段階で構成されており、それぞれのフェーズで税制上の優遇措置があります。
制度設計により、以下のようなパターンが可能です。
・事業主のみ掛金を拠出する制度
・加入者のみが掛金を拠出する制度(加入者掛金型)
・事業主掛金に加え、加入者が任意で上乗せする制度
①【拠出】…掛金が全額非課税(所得控除)
いずれの拠出形態でも、拠出時には税制優遇があります。
・事業主掛金型:企業が拠出した掛金は、福利厚生費として損金算入でき、従業員には課税されません。社会保険料の対象外でもあり、手取りへの影響も少なくなります。
・加入者掛金型/任意の上乗せ拠出:加入者が拠出した掛金は、全額が所得控除の対象となります。iDeCoと同様に、節税効果が得られます。
📌 ポイント
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拠出方法を柔軟に設計可能(事業主型・加入者型の選択)
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加入者拠出も所得控除の対象で、節税しながら将来の備えが可能
②【運用】…運用益が非課税
拠出された資金は加入者ごとに個別管理され、選択した投資商品で運用されます。通常、金融商品による運用益には税金がかかりますが、企業型DCでは運用益が非課税です。
📌 ポイント
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複利効果を最大限活かせる非課税運用環境
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長期運用により、資産形成の効果が大きく向上
③【給付】…受取時も税制優遇あり
給付金の種類や受け取り方法によって異なりますが、いずれも税制優遇が受けられます。
老齢給付年金(60歳以降) | 年金は公的年金控除、一時金は退職所得控除が適用 |
障害給付金(高度障害となった時点で) | 年金・一時金とも非課税 |
死亡一時金(死亡した時点で) | みなし相続財産として相続税の課税対象(受取りは遺族) |
📌 ポイント
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税制優遇により、実際の手取りが確保されやすい
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給付の方法をライフスタイルに合わせて選択可能
④【持ち運び(ポータビリティ)】…転職後も継続可能
企業型DCを導入している企業から退職・転職する場合でも、iDeCo(個人型DC)への資産移換が可能です。転職先に企業型DCがある場合は、そのまま移管することもできます。
📌 ポイント
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勤務先の変更後も、資産の継続運用が可能
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キャリアの変化に柔軟に対応できる年金制度
企業型確定拠出年金は、「拠出・運用・給付」の各段階で税制上のメリットがあるだけでなく、企業・従業員の状況に応じて柔軟な制度設計が可能です。企業にとっては、福利厚生の強化や人材確保のツールとして、従業員にとっては、老後の備えを税制優遇のある形で行える、非常に有効な選択肢といえるでしょう。
社会保険や労務のこと、制度についての「これってどうなの?」という疑問があれば、確定拠出年金に限らず、どうぞ気軽にご相談ください。