コラムcolumn
実務者が必ず押さえておきたい「給与計算の落とし穴」

こんにちは グスクード社会保険労務士法人です。
今回は、実務者が必ず押さえておきたい「給与計算の落とし穴」についてご紹介いたします。
給与計算というと、「毎月決まった金額を計算して支払うだけの事務作業」というイメージを持たれがちです。しかし、実務の現場では、労働基準法・社会保険・税法が複雑に絡み合う、非常に専門性の高い業務です。
計算の誤りや判断ミスがあると、
* 遡っての未払い残業代の支払い
* 税務署や年金事務所・労働基準監督署からの是正指導
* 従業員とのトラブル・不信感の蓄積は、経営リスクとして跳ね返ってきます。
本コラムでは、日々のご相談の中で特にご質問が多いポイントを、3つに絞って整理します。
1.「時間外労働」と「割増賃金」の区別があいまいになっていないか
まず押さえるべきは、「何時間を超えたら割増賃金が必要か」という基本ラインです。
・1日8時間、1週40時間を超える労働時間 → 時間外労働(原則25%以上の割増)
・法定休日(会社ごとに定める「法定休日」)に働いた時間 → 休日労働(35%以上の割増)
・深夜時間帯(22時~翌5時) → 深夜労働(25%以上の割増)
ここに、変形労働時間制やシフト制、所定休日などが絡んでくると、「法定時間内なのか」「割増が必要な時間なのか」が、感覚的には分かりにくくなります。
よくある誤りの例
・所定休日に出勤した時間を「休日割増(1.35)」と扱っているが、実際には週40時間以内であり、本来は「通常の1.0」のみでよいケース
・深夜時間帯の労働について、「深夜割増(0.25)」のみを上乗せし、**時間外+深夜(1.5)**とするべき時間を見落としているケース
こうした区別をあいまいなままにしていると、少額の誤差が数年分積み重なり、結果的に大きな未払いになることがあります。
2.「固定残業代」を導入している場合の計算ロジックは明確か
近年、人材確保の観点から、固定残業代(みなし残業代)を導入する企業が増えていますが、運用を誤ると、こちらも未払い残業のリスクが高いポイントです。
固定残業代を適法に運用するためには、少なくとも次の点が明確である必要があります。
・固定残業代の**対象時間数(○時間分)**を就業規則・雇用契約書に明示しているか
・固定残業代部分と、基本給その他の手当を区分して記載しているか
・固定残業時間を超えた場合、超過分の残業代を別途支給しているか
また、実務上は「○時間分の残業代」と記載しながら、その○時間の内訳(法定内・時間外・深夜など)について、会社側でも十分に整理されていないケースが見受けられます。
「固定残業代は入れているものの、どの時間をどの単価でカバーしているのかが説明できない」という状態は、万が一の際に、会社にとって不利な判断材料となりかねません。
3.社会保険・税金の取り扱いを「慣例」で済ませていないか
給与計算では、賃金そのものだけでなく、健康保険・厚生年金保険料、雇用保険料、所得税(源泉所得税)、住民税など、多くの控除項目を同時に扱います。
例えば、次のような場面で迷うケースが多くあります。
・入社支度金やインセンティブ、各種手当を「給与」として扱うのか、「旅費」「実費精算」として扱うのか
・一時的な支給(祝い金・見舞金等)が、社会保険の標準報酬月額の見直し(随時改定)の対象になるのか
・非課税通勤手当の改正があった場合に、どの支給月から、どのように反映するのか
これらを「前年と同じ処理」「前任者から引き継いだやり方」でそのまま行っていると、法改正や制度変更があった際に、知らないうちに誤った処理を継続してしまうリスクがあります。
まとめ:給与計算は「仕組み」と「検証」がポイント
給与計算の精度を高めるためには、担当者の努力だけに頼るのではなく、会社として次のような「仕組み」を整えておくことが重要です。
・就業規則・賃金規程と、勤怠・給与計算のルールを整合させる
・固定残業代や各種手当について、支給ロジックを文書化しておく
・法改正・通達等があった際に、処理方法を見直すチェックリストを用意する
・年に1回程度は、専門家による**給与計算・社会保険・税務の「健康診断」を受ける
給与は、従業員にとって最も身近な「会社からのメッセージ」です。「毎月きちんと、正しく支払われている」という信頼は、離職防止やエンゲージメントの向上にも、確実につながっていきます。
弊法人では、給与計算の代行業務も行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。




