こんにちは。グスクード社会保険労務士法人です。
企業において、従業員が規律違反や業務上の過失を起こした場合、懲戒処分や人事上の措置を検討することがあります。
その際に注意しなければならないのが「二重処分(ダブルペナルティ)」の問題です。
■ 二重処分とは
同一の事案について複数の懲戒処分を科すことは、判例上「二重処分」とされ、無効になるリスクがあります。
例えば、ある従業員の一度の過ちに対して「減給処分」と「出勤停止処分」を重ねて行うようなケースがこれにあたります。
■ 懲戒処分の種類
日本の労働法制や企業の就業規則において、一般的に規定される懲戒処分には次のような種類があります。
戒告: 文書や口頭での注意・警告。
減給: 労働基準法第91条の制限内で給与を減額する処分。 「1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えないこと」「総額が賃金の10分の1を超えないこと」といった上限規制がある。
出勤停止: 一定期間の就労を禁止し、その間の賃金を支払わない処分。
降格: 職位や役職を引き下げる処分。職務権限や役職手当が失われ、将来の昇進・昇給にも影響し得る。
諭旨解雇: 本来は解雇相当だが、本人の情状を考慮して退職届を提出させる処分。
懲戒解雇: 最も重い懲戒処分で、即時解雇となる場合もある。退職金の不支給や再就職への大きな不利益につながる。
■ 実務での留意点
懲戒処分や人事上の措置を適切に行うためには、次の点に注意が必要です。
・就業規則に明確な根拠を設けること
処分の種類や手続きを就業規則に定めておくことで、後でトラブルになったときにも有効性が認められやすくなります。
・処分は「一つの過ちに一つ」
同一の行為について、減給と出勤停止を重ねるなどの「二重処分」は無効とされるリスクがあるため、処分は一つに絞ることが原則です。
・処分の重さは社会通念上の相当性を保つこと
たとえば減給は労基法第91条の上限、出勤停止は数日~2週間程度が一般的に相当とされます。過度に重い処分は「懲戒権の濫用」と判断されやすい点に留意が必要です。
・人事上の措置との区別を明確にすること
降格など人事権に基づく措置は懲戒処分と性質が異なります。給与減少が伴っても「自然な処遇結果」であれば二重処分にはあたりません。
・判断過程を記録に残すこと
処分に至った経緯や理由を文書化しておくことで、後日の労使トラブル予防につながります。
■ まとめ
従業員の過ちに対して「毅然とした対応」を取ることは必要ですが、過度な処分は紛争の火種となります。
「一つの過ちに一つの処分」 を原則に、懲戒の種類や性質を正しく理解し、就業規則や人事制度を整えておくことが、最も確実なリスク回避といえるでしょう。
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